劇場・ホール・会館情報
落語用語集
寄席用語や落語の演出など、落語に関する用語をまとめました。これを知っておけば、初心者でも安心して落語鑑賞を楽しむことができます。
寄席用語
- 寄席
江戸では“人を寄せる”から“寄席”と呼ばれるようになったようです。上方では落語を主にする場合“はなしの席”、また単に“席”と呼ばれていました。関東大震災で東京から多くの芸人が来阪した頃から“寄席”と呼ぶようになりました。何人かが出る寄席形態の落語界も“地域寄席”など幅広く使われています。東京で寄席と言えば主に落語の専門劇場ですが、上方では戦争で消滅し、2006年の天満天神繁昌亭まで落語の専門劇場がなかったため、演芸場を指します。1年中、落語の興行をする寄席を「定席」(じょうせき)と言い、ホールや会館などで行なわれるものを「ホール落語」と呼び、区別しています。
- 高座
- 劇場の空間で、客席に向かって公演を行なうスペースを、現在はステージや舞台と言いますが、寄席では「高座」。板敷きの舞台の真中に座布団1枚を置くだけですが、ホール落語などの場合は、平台を組み、その上に座布団を置くので、少し高い“座”ができます。が、ただそこだけを指すのではなく、舞台全体を「高座」と言うのが妥当でしょう。
- 看板
- 客を呼ぶ看板に大きく名前が書かれる演者のこと。客を呼べる人気実力のある演者で、看板に一人だけ名前が書かれるスターを“一枚看板”、また“大看板”とも言います。芝居では“看板役者”などと使われています。
- 大入り
- 満員のこと。“大入”と書いた“大入り袋”に、五円玉(ご縁があるように)や五十円玉を入れて配る習わしは、歌舞伎や興行芝居などでもあります。
- お茶子
- 上方独特の名称で、芝居茶屋で働く女子のことを言いました。昔の寄席では席への案内のほか、お茶や火鉢など接待全般を担当していました。現在は、高座の座布団返しやメクリ(出演者の名びら)の返しなどをしていますが、東京ではこれは前座の役割です。
- 木戸銭
- 入場料金のこと。昔の寄席の出入り口が木戸で、木戸番がいたところから、そう呼ばれていました。
- ワリ
- 寄席のある東京だけで使われます。出演者の歩合給のこと。“ワリ”は入場料×観客数の総売り上げを、寄席の経営者(席亭)と出演者一同で分けます。時代によって、また諸事情によっても違いますが、折半か四分六。そして出演者側の額をみんなに割り振るので“ワリ”。トリを取る演者には高い基準が設けられますが、あとは個々の序列や人気によって配分率が細分化されています。同一人物でも、トリの出番のあるなしでレートは変動します。「ワリが合わない」と言う言葉が今でも生きていますね。
寄席の形態
- 出番
江戸では“真打制度”という序列の階級順、上方も昔は一定の基準がありましたが、年次を基本に色合いを考慮して組まれます。出番に通称があり、前座(入込 いれこみ)、二ッ目、三ッ目、四ッ目、中トリ、仲入り直後の出番をかぶりつき(くいつき)、しばり=トリの二つ前、膝変わり(モタレ)=トリの前、トリ(切り)。前座はほかに開口一番、御祝儀(上方)などとも呼ばれます。
- トリ
- 寄席の楽屋用語でしたが、今やフィナーレを締めくくる人のような意味で一般的化し、ステイタスの表現で用いられています。昔の東京では、まずトリの芸人が出演者全員のワリ(寄席用語を参照)を受け取り、各出演者に配分していた代表の“取り役"だったため、「トリ」という呼称が生まれたのです。最近は中入りまでの、前半を締めくくる人のことを「中トリ」と呼ぶのが通常になりました。「トリ」に準ずる大きい出演者という感覚で捉えられています。また、最後に登場する最高位の出演者という意味で「大トリ」と呼ばれることもよくあります。確かに「出演料を一番多く取る人」ですが、原義から考えると「大トリ」は「出演料を独り占めするケチな人」、「荒稼ぎをする人」のようなイメージになり、ましてや「中トリ」など、昔にはあり得なかった呼称と言えるでしょう。
- 仲入り・中入り
- 寄席の休憩時間のこと。にんべんを付けるのは、人が大勢集まるようにとの縁起かつぎ。
- はねる
- 芝居言葉に由来する終演のこと。江戸時代の、初期の芝居小屋はむしろ掛けで、芝居が終わるとむしろをはね上げたことから、こう呼ばれました。
落語の形態
- まくら
落語を演じる前に、本題のストーリーに入る前にしゃべる話。落語の“頭につける”ので、「まくら」と言います。本来はネタの噺と無関係なものを話すことはタブーとされていましたが、徐々に変化し、今では「まくら」の「まくら」のようなものまであったり、「まくら」をふらず、そのままネタへ入ることもあります。
- オチとサゲ
- 落語の締めくくりの言葉で、東京では近年「サゲ」が主流。「オチ」を言って噺を落とす、演者が高座を下がるから「サゲ」。「オチ」「サゲ」があってこその落語であり、落語の生命とも言われています。
落語の演出
- 「扇子」と「手拭い」
東西ともに代表格の小道具。「扇」は箸や刀、キセルとなり、「手拭い」は手紙や財布などにもなります。多様なものを表現する“見立て”によって、観客の想像力を膨らませているのです。
- 「見台」と「膝隠し」
- 上方落語独特の演出形態。その昔、小机のような「見台」を“小拍子”で叩いて、往来する人の足を止めたと言われています。“張り扇”と“小拍子”で「見台」を交互に叩き、リズム感を習得する「東の旅・発端」は、米朝一門の入門者が最初に訓練するための噺です。「膝隠し」は動きの多い噺で、着物の裾の乱れを隠すものであり、また小道具を隠しておくために用いたりしたこともあるようです。噺により使用しない場合も多く、あえて使わない演者もいます。
- 「出囃子(でばやし)」
- 落語家が登場する時に、お囃子の三味線方が奏でる音楽(主として邦楽)のこと。演者ごとにテーマソングのような曲があり、上方から江戸へ移入されました。上方の寄席囃子は歌舞伎のパロディーとして始まり、芝居噺で充実、徐々に上方落語独自の音楽として洗練して行きました。
- 「ハメモノ」(鳴り物)
- 落語の噺の途中に三味線や唄などが入り、演奏して効果を出すお囃子のこと。効果音や道中の賑わい、お座敷遊びなど、数多くの噺があり、より楽しく華やかな雰囲気を好んだ上方落語ならではの演出です。江戸落語は素噺が主流のため、音曲噺や芝居噺とジャンル分けされていました。